2013/02/10

空白の午後


   検査の結果、腫瘍は良性だった。
それだけで十分だったはずなのに、
診察室を出たあと、時間が急に余った。

安心すると、気持ちの置き場がなくなる。
張り詰めていたものが緩み、
頭の中に、わずかな空白ができる。

僕はたぶん、真面目な人間だ。
少なくとも、自分ではそう思っている。
軽い気持ちで何かに手を伸ばす、
そういう癖はないつもりだ。

だが、何も起きなかった日の午後は、
妙に手持ち無沙汰で、
余計なことを考えさせる。

会社では、相変わらず働いている。
誰と誰の間にも立ち、
感情がぶつからないように、
空気をならす役回りだ。

性格の正反対な人間同士をつなぎ、
どちらにも肩入れせず、
中立でいることを求められる。

正直、それは疲れる。
だが、代わりにやる人間もいない。

検査結果が良性だったことよりも、
そのあとに残ったこの空白のほうが、
今は少しだけ厄介だ。

何かが足りないわけではない。
ただ、張り詰める理由が、
一瞬、消えただけなのだと思う。

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