2026/09/28

コスパタイパくるりんパッ

本文とは一切関係ない写真

 キャバクラの同伴ほど、
馬鹿馬鹿しいものはないと思っていた。

けれど、そう決めつけるのも、
どこか違う気がした。

何事も、一度くらいは経験してみなければ、
本当のところはわからない。

過去に一度だけ、ラーメン屋で同伴をしたことがある。

今になって思えば、
ラーメン屋同伴を受け入れた私は、
間抜けだったのだと思う。

なにしろ、ラーメンを食べるだけなのに、
一時間半もどうやって間を持たせようかと、
そんなことを考えていていた。

ところが、終わってみれば、
わずか三十分だった。

「ラーメンが伸びちゃうから」
「もうお腹がいっぱいで食べられないよ」

こちらは一時間半をどうするか考えていたのに、
向こうはラーメン一杯のことしか考えていなかったらしい。

それまでにも他の子と、何度か同伴はあったが、
こんなに早く終わったことはなかった。

だから勝手に、
今回も同じようなものだと思っていたのだろう。

テキはウワテだった。

考えてみれば、
こういうことになるのも自分の甘さだったのだろう。

少しばかり経験を積むと、
それだけで相手のことまで
わかったような気になる。

ラーメンは伸びなかった。
時間も。

考えすぎていたのは、
どうやら私のほうだった。

それなのに私は、入店後、
「たった三十分かよー」
と、ぶつぶつ言っていた。

その子は、嫌な顔をした。

同伴については、
ほかにもいろいろと苦々しい思い出がある。

けれど、今になって振り返ると、
あのラーメン屋での三十分は、
妙に印象に残っている。

 コスパとかタイパとか、
そんな言葉が当たり前のように使われる時代になった。

ラーメン一杯で三十分。

一時間半を予定していた私のほうが、
よほど時間を使い損ねている。

そう考えれば、
あれは案外、コスパもタイパもよかったのかもしれない。

これも経験である。

コスパ。
タイパ。

考えすぎると、
結局こうなる。

くるりんパッ。

ラベル:

2026/09/26

Minolta Pocket Autopack 430E

2001.11.04撮影

  このカメラには、いろいろと思い出がある。
私にとって、初めてのカメラである。

ミノルタのポケットオートパック430E。
値段は、たしか1万円くらいだったと思う。

駅の近くにあったアオイカメラ。
今はもうないその店で買ったような気がする。

なぜカメラが欲しかったのか。
鉄道写真を撮りたかったからだと思う。

5年生になりたての頃、
同級生に110ポケットカメラを持っている子がいた。

駅に入場券を買って入り、電車の写真を撮っていた。
鉄道好きで、気さくな子だった。
私が唯一、話のできる子だった。

写真やカメラを見せてもらっているうちに、
私もその子と同じようなタイプのカメラが欲しくなった。

フィルムの装填がカートリッジ式で、
自分にもできそうだと感じたのだろう。
35ミリタイプでは、フィルムを装填する自信がなかった。

私の家は本家ということもあり、
親戚一族の集まりがしょっちゅうあった。
そしてなぜかカメラ好きが多かった。

撮影やフィルム装填の様子を見ていた。
それも理由のひとつだったのかもしれない。

カメラ屋までは母親と行ったことは覚えているが、
このカメラを、
誰がお金を出してくれたのかは覚えていない。

今までのクリスマスプレゼントで最高でも、
3,980円くらいだったと記憶している。
たぶん、祖父がお金を出してくれたのだと思う。

4年生の11月、
田舎のほうの小学校から、街中の小学校へ移った。
家も分家から本家に移った。

そこには、すでに出来上がった人間関係があった。

街中の子供は、どこか違う。
田舎の小学校とは、ずいぶん雰囲気が違っていた。

よそ者に対する敵意というものを、
子供の世界で初めて知った。

私を目の敵にする子がいた。
ひとりの女子は、なぜか親切にしてくれた。

それが気に入らなかったのか、
嫉妬する男子までいた。

その女子は、今思えば美少女だった。
そんなことも、今になって思い出す。

みんながお互いを知っている場所に、
ひとりだけ知らない人間として入っていく。

転校生というだけで、目立つ。
それは身をもって知った。

私はいつも誰かと一緒にいるような子ではなかった。
ひとりでいることが多かった。

なぜいじめられるようになったのかは、
今でもよく分からない。

転校する前の学校では、愛鷹で宿泊訓練があった。
私は普通に参加した。

ところが転校した翌年、また宿泊訓練があった。
今度は朝霧だった。

「またかよ」と思った。

転校してようやく少し慣れてきた頃に、
学年が上がり、クラス替えがあった。

それから4か月。
私は、まだ新しい仲間に馴染めていなかった。

いつの間にか、女子の集団からいじめられていた。

その状態で、2泊3日の集団生活である。

嫌だった。
どうしても行きたくなかった。
泣いた。

そして最後には、自宅のトイレに逃げ込んだ。
便器にしがみついて、行きたくないと抵抗した。

親も祖父母も困ったのだと思う。
出発の時間は迫っていた。

だから、学校へ電話したのだろう。

担任の女性の先生が、家まで来た。

それまで、私がカメラを欲しいと言っても、
母親は受け流していた。

それが、この時ばかりは違った。
先生のいる前で、母親は言った。

「宿泊訓練に行って帰ってきたら、
カメラを買ってあげるから!」

私は、それで渋々行ったのだと思う。

あの頃は、嫌だから行かないということが、
今ほど簡単ではなかった。

学校へ行く。
行事にも行く。

そうするものだった。

そして、夏休み明け。

その話が同級生の間に広まった。
どこから漏れたのだろう。
あのことを知っているのは、
学校と家族くらいだったはずだ。

「甘えている」

「カメラなんて買ってもらってよー」

「わがままだ」

そんな言葉を、私は浴びせられた。

トイレに逃げ込み、
便器にしがみついて泣いたことも知られていた。

いつしか私は、「便所マン」と呼ばれるようになった。

そこから、今度は男子の
集団からのいじめにつながっていった。

カメラを買ってもらった時のことを思い出すと、
その頃のことまで一緒に出てくる。

このカメラは、もう手元にはない。
どこへ行ってしまったのかも覚えていない。

残っているのは、この写真だけだ。

430Eを手に入れてから21年後、
私は、このカメラを写真に撮っていた。
気まぐれだったのだと思う。

それを見ると、1980年の夏が戻ってくる。
あの頃の自分も、まだそこにいる。

今でも人付き合いは得意ではない。
そのあたりは、ほんと変わっていない。

写真の方も、変わらずずっと撮っている。

ラベル:

2026/09/09

非日常感をください

 先週末、友人とドライブに出た。
といっても、目的地そのものより、車内の雑談が
主役みたいなものだ。

あいにく秋雨前線が停滞していて、
空はどんよりと曇っている。

これでは景色を眺めながらのドライブ
というわけにもいかない。

さて、どうしたものか。

相談した結果、
雨の日の強い味方である大型ショッピングモール、
ららぽーと磐田へ向かうことになった。

せっかくの遠出だ。買いたいものもあった。

部屋で育てているガジュマルの土が、
最近どうにも痩せてきていたのだ。
根は露出気味になり、葉も少しずつ落ち始めている。

このまま放置するのは、あまりよくない。

少し前にホームセンターも覗いてみたのだが、
売られている土はどれも立派すぎた。

一鉢のために買うには、少々大袈裟である。
調べてみると、100円ショップにも園芸用品があるらしい。
ならば今回は、それで十分だろう。

そんな目的を抱えて、私たちはららぽーとへ向かった。

しかし、私にとってショッピングモールの魅力は
買い物だけではない。

子供だけでなく、
大人にとっても遊園地に等しいと思っている。

世の中には、モール嫌いの人もいるらしい。

だが私は好きでたまらない。
本屋もあれば雑貨屋もある。
腹が減れば食事もできるし、疲れたら椅子もある。

特に欲しいものがなくても、歩いているだけで、
それなりに楽しい。

到着した頃には、ちょうど昼時になっていた。

「昼食どうするか?」

普段なら、店外へ出て
回転寿司あたりへ向かうところだ。

だが、この日は少し気分を変えたかった。

飲食フロアを歩きながら一通り見て回る。

しかし、どこも決め手に欠ける。

そんな時、ふとマクドナルドの前を通りかかった。

そういえば、最後にマクドへ来たのはいつだっただろう。
思い出せないほど来ていない。

記憶を辿ってみても、十年近くは経っている気がする。

その時も、自分から進んで入ったというより、
誰かに誘われてだったはずだ。

私は立ち止まり、友人にこう言った。

「非日常感をください」

私にとっての非日常とは、
このマクドナルドだったのである。

久しぶりのマクドは、
思っていた以上に様変わりしていた。

まず、注文方法がわからない。

タッチパネルを前にして、
軽く時代に置いていかれた気分になる。

幸い、そのあたりは友人が慣れていた。

どうやら、チーズ月見と炙り牛すき焼き風月見の
ペア向けセットがあるらしい。

せっかくだから、それにしてみた。

期待値は、それほど高くなかった。

ところが、これが思いのほか美味しい。

すき焼き風の甘辛い味付けと
月見の組み合わせは悪くない。

チキンナゲット用に選んだ期間限定の
「黄金の卵タルタルソース」も当たりだった。

試しにポテトを浸してみる。
これもなかなか良いアンバイである。

非日常ついでの限定品選択は、大正解だった。

そういえば、こうして友人と向かい合って、
バーガーをあんぐりと口を開けて
食べている自分を思うと、少しおかしくなる。

昔から、人と一緒に食事をすることには
ひどく躊躇したものだ。

特に女性と向かい合うとなると、恐怖に等しかった。

それが今では、目の前の友人と
くだらない話をしながらバーガーを頬張っている。

何を食べるかよりも、どう食べているか。

そんなところにも、昔とは違う自分がいるらしい。

些細な変化も含めて、
目の前の時間が心地よかった。

食後、ようやく本来の目的を思い出した。

ガジュマルの土である。

100円ショップへ向かう。
目当ての観葉植物用の土は、あっさり見つかった。

ホームセンターの大きすぎる袋とは違い、
実に手頃なサイズだ。

「話を盛る人には用心したいが、
土を盛るのはガジュマルのためになる」

そんなことを思いつつ、無事に土を確保した。

そして、本屋へ向かった。

私はショッピングモールの中でも、本屋が特に好きだ。

何かを買うつもりがなくても、つい足が向いてしまう。

店内をぶらぶら歩きながら、

「この本屋、
ヌードポーズ集がちゃんと立ち読みできるから
穴場なんだよな」

と、身も蓋もない話をする。

あの手の本は絵描き向けの資料集なのだが、
他の店だとビニールで閉じられていることが多い。

中身を見て選びたいので、
立ち読みできる店は案外ありがたい。

しかも、その棚のあたりは人通りも少なく、
妙に落ち着く。

青年漫画誌の棚を眺める。

表紙にはコスプレイヤーたちが
ずらりと並んでいた。

最近はグラビアというより、
コスプレ写真集の延長みたいな表紙も多い。

どうにもときめかない。

「今回は全員不合格だな」

実に好き勝手なことを言う。

「厳しいな」

と友人は笑う。

「なんというか、
みんな同じ方向向いてる感じなんだよな」

そう言いながら、
次の棚へ移動する。

文字にすると、実に品がない。

だが、そういうどうでもいい話ができる相手というのは、
案外貴重なものだ。

本屋を出たあと、CDショップにも久しぶりに入ってみた。

昔はもう少し、ジャンルの違うものが
ほどよく並んでいた気がする。

しかし、今のラインナップはどうも少し違う。

店内を眺めながら、私は友人に言った。

「なんかメロンブックスの店内みたいじゃん」

そんなことを言いながら、またしばらく店内を歩く。

窓に目線を移すと、
いつの間にか、外は雨が強く降っていた。

ガジュマルの土を買うために出かけたはずだった。

それなのに、今思い返してまず浮かぶのは、

月見バーガーの味。

本屋での馬鹿話。

CDショップでのくだらない発言。

肝心の土のことは、
その次くらいにしか出てこない。

まあ、それでいいのだと思う。

土はガジュマルのためになった。
そして雑談は、私のためになった。
こういう一日も、案外悪くない。

ちなみに、9月のガジュマルは、
土を全部入れ替えるよりも、
少々盛るくらいにしたほうがいいらしい。

これからの季節に向けて、
全部入れ替えるのは木全体への負担になるのだとか。

今回の私も、どうやら最初から最後まで、

「盛る」

くらいがちょうどよかったらしい。

土も。

話も。

そして、一日も。

ラベル: ,

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